日本財団 図書館


ロール活動をされる際、海上でのルールや安全意識について呼びかけを実施されていることが、如何に事故防止に繋がっているのか、幾つか述べることとします。
?交通ルール
「海は右側通航である」という基本は、皆様ご存じのように言うまでも有りません。しかし、レジャーで時々しか船を操船しない者は、船が係留されている場所まで自動車に乗って行き、引き続き船を操船することになるわけです。そうしますと、自動車運転中の通行方法である左側通航の感覚のままで船を操船することになり、他船との見合い関係においても、その感覚のまま避航(右舷対右舷)し、危険となる場面、つまり「ヒヤリ」「ハット」する場合を発生させることになり、これが運悪く事故に繋がることになります。特に最近では、若者の間で水上オートバイが普及し、陸上でのオートバイと同じ感覚で操船しているのが良く見かけられ、非常に危険な場面も多々あるように見受けられます。したがって、「船は右側通航ですよ」「避航する場合は、右に転じ、左舷対左舷で他船を避けて下さい」といったちょっとした呼びかけが重要であり、事故防止に寄与するものと思われます。
?気象・海象の把握
海上を航行している船舶は、気象・海象の変化が大きく影響し、中には過去の事例においても、特に小型船の場合のように、高波を横から受けて転覆し、尊い人命が失われています。また、万一の場合、陸上の様に直ちに救助されるというわけにはいかないのが現状です。したがって、皆様方の経験豊富な感性や天気予報の情報の基に、気象。海象の悪化が予想される場合には、認識が薄い操船者に対し、勇気ある運航の中止又は帰港の決断等を促して頂ければ、事故防止に繋がるわけです。
?救命胴衣の着用
船は水に浮かぶものですから、その構造に関する安全規則はキメ細かに整備され、厳しい検査制度がありますが、それも万全ではなく、時として、風浪による船体動揺であったり、船底に破口が生じたりして、乗船者が海に投げ出されることもあります。その際、自分の身を守るのが救命胴衣であり、救命胴衣を着用することが重要な事故防止又は被害を大きくしない要因の一つです。泳ぎが達者な者でも、救助船が来るまでの間、浮いていることは相当な体力を使い、力尽きて海中に没することもあります。泳げない者はなおさらのことです。救命胴衣の着用は、前述の「間違っても安全(fail safe)」の観点からも重要であります。したがって、是非、安全パトロール中の活動における重要事項の一つとして、救命胴衣着用の呼びかけを実施してもらいたいと考えています。
?船の運動性の把握
車は急に止まれないという言葉がありますが、これはスピードの出し過ぎの場合であって、一般的には、ブレーキの作用によって強制的に止めることが可能です。しかし、船には、自動車の様にブレーキが有りませんから、後進をかけることになります。また、右転や左転といった運動性能は、自動車の場合と同じ様に、スピード(船の速力)によって大きく変化します。船の操船の経験が浅い者又は初心者は、船の停止距離といった運動性能の把握が充分ではありません。操船者自らが、乗船している船の運動性能を知っていることは、非常に重要なことです。この辺についても、万一のことを想定して、把握してもらうよう呼びかけをお願いします。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION